青森県男女共同参画センターより、男性向け料理教室のご依頼をいただきました。以前、講師を担当した「はじめての旦那ごはん部」での反響もあり、今回につながったようです。
当初は未婚の男女を想定し、一般的な料理教室のフォーマットでのご依頼でした。
ですが、状況が状況なのでオンライン開催で検討はどうでしょうか?と提案したところ、最終的に承諾いただいてこの形となりました。
先方でZoom利用を前提にとなり、インターネット環境や機材という課題について解決策を提示していったところオンライン開催が確定されました。
ダディはプログラマーなのでオンラインでのコミュニケーションに抵抗がないのですが、緊急事態宣言の中でZoomが広まったことは追い風になったと思います。
古川家では、家庭内でもオンラインを前提とした活動の下地を作っています。
自主休校を決めた家族が取り組んできた自宅学習の環境構築ノウハウ|古川家|note
今年は「知ってる?世界のサンドイッチ」など、人が集合して体験するご依頼はすべてお断りしていました。どうやったら安全に楽しく体験できるか?ずっと考えている中で、ちょっと先が見えた気もします。
料理教室は最適な学習方法なのか?
料理教室というと、講師が細かくレシピを用意して、デモンストレーションをして、参加者がその通りに動くというケースが多いかと思います。
加えて、グループワークだと調理工程を分担することによって、体験できない部分が発生したりします。
人が集まってのコミュニケーションも大切ではありますが、何より料理について体験することが目的なので、最初から最後まで料理を楽しむフォーマットにしたいと考えていました。
リモートであれば、基本的に分担なく自分で調理することになりますし、参加者の誰もがその場で講師に直接質問ができます。
調理台が複数ある場所は、移動の状況によって声をかけづらかったりという欠点がありますが、リモートはそれがありません。
調理環境は人それぞれが当然だから良い
古川家は家庭料理を軸にしています。どこかの施設に集まってとなると、普段の環境と異なっているため効率が悪かったり、そのまま自分の環境に落とし込めない場合があります。
リモートの場合、ご自宅のキッチンを利用してもらうので、いつも通りの環境で調理できます。
セミナーに参加して帰ってから実践ではなく、参加の場そのものが実践の場になります。
さらには用意する食材の量も、アレルギーや好き嫌いも人それぞれです。それらを講師が統一してしまうことに古川家はずっと疑問をもっていました。
それぞれが異なる事情なのは当然で、最大公約数の内容ながら誰もが楽しめる内容を。難しそうですが、考えがいもあるし、古川家という活動をしているからこそ、形にしたいと思いました。
「プレーンおかず」で持ち寄り会のような料理教室に
講師がいて生徒に教える、ではなく。それぞれが思い思いの食材を持ち寄って、それぞれの料理でみんなが楽しい場となる。そんなイメージを描いていました。
結果として、完成させる料理を固定しない、用意する食材に幅を持たせるという方式に落ちつきました。
ご依頼いただいたテーマは「料理が不慣れな方でも簡単に作れる夕食メニュー」。開催はお昼なのですが、食べるタイミングは夕食。
であれば、その場で食べても良いし、時間をおいて夕食に食べてもおいしいし、仕上げだけですぐ完成させられるような料理にしよう。
条件だけ並べると無理難題に見えますが、古川家は「プレーンおかず」というノウハウを共有することにしました。
プレーンおかずは、そのまま食べることもできますが、シンプルな味付けで保存性がそれなりにあり、好きな食べ方に仕上げるための素材でもあります。
今回は以下の3品でした。
- フライパン蒸し鶏
- レンジ仕込み野菜
- 蛇腹きゅうり
どれも味付けは塩のみですが、そのまま食べても良い状態にしています。そのため、好きな調味料と混ぜるだけで色々なアレンジが可能です。
コスパ抜群で仕上がりも変幻自在
フライパン蒸し鶏を例にとると、フライパンひとつで作れますし、レンジでもOKです。
鶏むね肉を使うのですが、火を通すとすぐ固くなってしまうこともあり、お財布に優しいけども使いづらい食材と思われがちです。
できたてを柔らかく仕上げようとすると火加減がとても難しくなります。ですが、ちょっとした工夫をするだけで、そんな心配も不要になります。
アレンジも簡単で、食べるタイミングで調味料と混ぜるだけで一品になりますし、チーズとトマトをのせてトースターで焼けばメインにもなります。
プレーンおかずから展開した料理を応用レシピとして、それぞれについて用意しました。フライパン蒸し鶏だけで10品もあります。
好きなレシピを選んでチャレンジ!が、手際良すぎメンズ
それぞれの事情に合わせて調理できるよう、事前にヒアリングシートで作る量や避けたい食材、キッチンに立つ頻度や用意できる調理器具などを把握しています。
必要な食材、用意しておくと便利なもの、応用レシピ等を1ページにまとめ参加者のみインターネット上で見られるようにしておきました。
まずは時間内でプレーンおかず3品を作るところがゴール。時間に余裕があれば、応用レシピにチャレンジ。
応用レシピは好きに選んで良いので、必要な食材も合わせて買っておくという形にしました。
前半は衛生管理とキッチンの流れについての座学を少々、その後はみんなで超という流れです。
古川家は作り方の動画を事前に用意して説明。参加者はそれを見ながら調理していき、自分のタイミングで質問。
もっと苦戦するかと思ったのですが、みなさん手際が良すぎて時間内に終わるのはもちろん、応用レシピまで進んで1人あたり3品はササッと作ってしまいました。
習いに来るっていうレベルには見えなかったです(笑)
応用レシピを作っている間は、自習モードみたいで見ているだけで楽しかったです。家庭で料理している姿を見るって、そうそうできない経験ですし。参考になるところもたくさんありました。
キッチンに立つ人は最後の砦
料理教室というと、調理をはじめ技術面にフォーカスされがちです。旦那ごはん部でもそうでしたが、古川家では最初にキッチンに立つ上で押さえておきたいポイントを話しています。
今回は家庭内での衛生管理と、キッチンの流れについてでした。
日本は高い衛生基準によって、安全性の高い食材が簡単に安く手に入ります。ですが、せっかくの高水準な食材も、管理方法ひとつ間違えば毒になってしまいます。
基本的に食べ物は口から体の中へ直接入れます。おいしいことは重要ですが、それ以上に安全であることが第一です。
そんなこと当たり前と思うかもしれませんが、料理教室で最初に必ず衛生管理から説明するというケースは、体験したことがありません。
キッチンに立つ頻度に関わらず、命に関わるものである自覚を持った上で取り組まないと、些細なことから大事故になってしまう可能性があります。
飲食店のにように業務として食を扱っているところは、事故を起こせば重い罰則が待っています。しかし、家庭で飲食店と同じレベルで衛生管理されているところはそうそうないかと思います。
すべて完璧は難しいので、事故が起こりやすいポイントだけ押さえておく。これだけでも違います。
当日は、生肉を扱うのでそこを切り口にお話ししました。
せっかく作った料理で喜んでもらいたかったはずなのに、それが原因で体調を崩すどころか死亡事故にまでなったら最悪です。
大げさではなく、そんなことが簡単に起こってしまうのが食べ物の怖いところ。
手際良すぎメンズからは、調理器具の手入れ方法にまで質問が出たのですが、そこはやや面食らいましたけど(笑)
安全でおいしい。身近な人に食べてもらう家庭料理だからこそ、大切にしたいところですね。
古川家にとっても新たな一歩
貴重な機会をいただいたおかげで、自分たちなりに料理教室という形について新たなチャレンジができました。ありがとうございました!
参加者みなさんアンケートでも好評だったようで、大変うれしいです。
自宅で過ごす時間が増えたことで、食と料理への関心が高まっている傾向も感じています。
年齢・性別関係なく、人として生きる以上は「食べて栄養をとる」という行為が特別な事情でもない限り基本になります。
手に入る食材を自分で調理して食べられるようになることは、生活を豊かにするというより、生きていくために必須ではないでしょうか。
世界中の食材や調味料が手に入る家庭料理大国の日本でなら、食べることはもちろん、料理をすることも今まで以上に楽しみながら身につけられると思います。
今回をきっかけに、古川家で新たな取り組みを進めていくこととしました。
お披露目する機会があるかと思いますが、そこに向けて練り上げていきたいと思います。